こんにちは、ウミガメ(@umigametool)です。
トルクレンチは整備士として仕事をする上でとても使用頻度が高く、重要な工具ですよね。
使用頻度が高いことから整備士になって1番に買った工具がトルクレンチ、という方もいらっしゃると思います。
私も整備士になってすぐの頃に購入したのを覚えています。
しかしトルクレンチも種類が多く、ある程度信頼できるものになると価格も高くなってきますよね・・・
最初の1本はもちろん、買い替えや追加購入でも悩む方は多いかと思います。
本記事ではそんなトルクレンチの中から他メーカーとは一味も二味も違うトルクレンチ、スタビレーのクイックタイプのトルクレンチ「730/20QUICK₋JP」を紹介します。
STAHLWILLE(スタビレー):トルクレンチ「730/20QUICK-JP」のおすすめポイント
トルク設定を戻す必要がない
多くのトルクレンチでは保管時にトルクの設定を最小値に戻す必要があります。
内部のコイルスプリングを引っ張ることでトルク設定を行っているため、そのままにしておくとスプリングがヘタってくるからです。
それに対してスタビレーのトルクレンチは板バネ式(リーフスプリング式)と呼ばれる構造を採用しています。
板を弾く強さでトルクが決まるため、実際に力を掛けた時にしか板バネに負荷がかかりません。
ですので、保管時などの使用しない時でもトルク設定を最小値に戻す必要がありません!
私が購入した「730/20QUICK₋JP」はトルク幅が40~200Nmで、ホイールナットの締め付けがメインの使用になります。
ホイールナットの締め付けなんて1日でも何回も、何台も行う作業ですからそのたびにトルク設定をする手間を省けると思うとかなり作業が楽になるのが分かりますね!
トルクの設定が簡単・早い
スタビレーのトルクレンチが板バネを使用しているのは前述しましたが、そのおかげでもう一つのメリットが生まれます。
トルクの設定が速く簡単にできる、ということです。
コイルスプリング式のトルクレンチだと、内部のスプリングを締め込むことでトルクの調整をするのでどうしてもハンドルなどを回す必要があります。
結構な回数まわさないといけませんし、メーカーによっては高いトルクにするほど硬くなって回すのが大変になる事も・・・
しかしスタビレーのクイックタイプのトルクレンチなら弾かれる板の長さでトルクの設定を行っているため板をスライドさせるだけでトルク設定が可能です。
手順としては
①グリップエンドのロックを解除
②ロックを解除したままメモリをスライドさせる
これで設定が完了します。
時間にして約0.5~2秒程度。
コイルスプリング式のものは数秒から10秒程度は時間がかかってしまうので時短になりますし、単純に設定自体が楽です。
ヘッドが着脱式
スタビレーのトルクレンチにもいくつか種類がありますが、私が購入した730のシリーズはヘッドが脱着式になっています。
ヘッドを裏向きにも取り付けることができるので、逆ネジ(左ネジ)にも対応しています。
トラック関係などで逆ネジのホイールナットを締め付ける事もあり、私はそのたびに他の人にトルクレンチを借りていました。
このトルクレンチを入手したことで人に工具を借りる手間や時間を減らすことができます。
手間や時間もだけど、人に工具借りること自体も普通に嫌ですよね(笑)
また着脱式と言うことで、ラチェットヘッド以外のヘッドも取り付けることができます。
メガネタイプのヘッドやスパナタイプのヘッドもあるので、スペースが限られた所などでは助けられることもあるかと思います。
余裕がある方はメガネやスパナタイプのヘッドも揃えておきたいですね。
ちなみにこのトルクレンチ、本体のみでヘッドを別売りされている事が多いです。
私はラチェットヘッドとのセットで販売されているものを購入しましたが、ネットでの購入を考えている方は特に注意しましょう。
トルク到達時の音がかっこいい
スタビレーのトルクレンチの人気のポイントとしてよく挙げられるのが設定トルク到達時の音と手に伝わるクリック感です。
板バネ式からくる独特の音と感触で、実際に使ってみると他のトルクレンチとは全然違うのがわかります。
文字で表現するのは難しいですが、他メーカー(コイルスプリング)のものを「カッチン」とするとスタビレーのものは「パキッ」という感じです。
とても気持ちのいい音と感触で、病みつきになる人が多いのも納得ですね!
STAHLWILLE(スタビレー):トルクレンチ「730/20QUICK-JP」のデメリット
価格が高い
スタビレーのトルクレンチの欠点として1番に出てくるのが価格の高さです。
安いものだと3000円程度から購入でき、整備士の方が仕事で使う人気のものでも2~4万円程度のものが多いです。
そんな中で今回紹介している「730/20QUICK-JP」は約5.5~7万円程度と、よく使われるトルクレンチの価格帯と比べても2倍程度の価格となっています。
私も昔からスタビレーのトルクレンチには憧れがありましたが、今まで購入を悩んでいた理由がこれですね。
本記事でも比較として出している東日のトルクレンチはとてもコストパフォーマンスに優れています。
コスパ重視の方には東日のトルクレンチもおすすめですね。
目盛りの最小単位が5Nm
私が購入した730/20QUICK-JPは目盛りの最小単位が5Nmとなっています。
基本的には締め付けトルクは「〇Nm~△Nm」のような感じで幅を持たせてあるので5Nm単位というのは特に問題ありません。
どちらかと言うと問題なのは私の性格(笑)
例えば120Nmに設定する場合120Nmピッタリになっていないと気持ち悪いんですが、5Nm単位だと微妙なズレが気になったりしてしまいます(笑)
こういう場合にモヤっとしてしまうんですよね。
コイルスプリング式のトルクレンチだと40~200Nmのトルク幅のものでも1Nm単位で設定できるものが多いですが、やはりそちらの方が数値ピッタリに気持ちよく設定できるとは思います。
使っている内に慣れるとは思いますが、私のように細かく気にしてしまう方は注意したいポイントですね。
目盛り部が見づらい
730/20QUICK-JPは目盛りが少し見づらいです。
めちゃくちゃ小さいという程ではないのですが、目盛りの見やすさに関しては他メーカーに劣っていると感じています。
実は同じモデルで以前は目盛り部に拡大レンズが付いていました。
拡大レンズが付いている状態なら特に気にもならず良かったんですが、コストを抑える為か現在はレンズがなくなっています。
工具屋さんによってはレンズ付きのものが在庫してある店もまだあると思いますので、どうしてもレンズ付きが欲しい場合は探してみましょう。
私もレンズ付きが良かったんですが、私が見つけたレンズ付きよりも現行のレンズ無しの方がだいぶ安く手に入りそうだったので妥協してレンズ無しを購入しました(笑)
下記の記事ではHAZET×DEEN、スタビレー、Weraの3メーカーの目盛り部を比較しています。
記事中のスタビレーのトルクレンチもレンズ付きのタイプです。
良ければこちらの記事も参考までにお読みください。
関連記事:HAZET×DEEN、スタビレー、Weraのトルクレンチを比較してみました。
STAHLWILLE(スタビレー):トルクレンチの内部構造
本記事を書くにあたり、喜一工具様(@Kiichi_tools)より内部構造を見ることができるカットサンプルを提供していただきました。
他メーカーとは違う構造になっているので見てみましょう!
こちらがトルクレンチの内部の全体。
パッと見た感じではどういう風に動くのかわかりませんよね(笑)
クリック部
トルクレンチに力を入れると、まず先端側の①が矢印の方向に動きます。
すると、それに押された部品がシーソーのような形で②の方向に上がります。
上がった部品の先端と、その横の部品(青の矢印)が当たります。
上の画像が当たったところです。
さらに力を加えていくと赤矢印の向きに力がかかり、設定トルクに達すると当たっていた青矢印の部分がズレてクリック感(手に伝わる振動)を発生させます。
トルク調整部
トルク調整部はこんな感じ。
分かりやすいように最小値の20Nmと最大値の100Nmで比較してみました。
20Nmと100Nmで部品の位置が変わってるのが分かりますね。
支点が変わることで棒(板バネ)の長さが変わり、張力によってトルク設定をしているようです。
今回お借りしたカットサンプルはダイヤルタイプで、グリップの内部はネジ状になっています。
私が購入したQUICKタイプはこんな感じ。
ロック部分を緩めることで支点と繋がった目盛り(画像上側のプレート)を直接動かせるようになっていますね。
コイルばねを使っておらず板を弾くような形でトルク設定をしているので、「使用時にしかばねに力が掛からない→トルク設定を戻す必要がない」というのが分かりますね。
文章だと中々説明が難しいですが、少しでも伝われば嬉しいです。
STAHLWILLE(スタビレー):トルクレンチ「730/20QUICK-JP」のサイズ感・詳細
全長
スタビレー「730/20QUICK₋JP」の全長は495mm。
40~200Nmのトルクレンチとしては一般的かと思います。
東日の「QL200N4」と比較してもほぼ同じですね。
しかし注目したいのが有効長(ソケット差込部中心から手で回すポイントまでの長さ)。
東日は390mmなのに対し、スタビレーは430mmとだいぶ違います。
スタビレーはほとんどトルクレンチの端から端までを使っているような感覚ですね。
もちろんこれだけ有効長が違うので、同じトルクの締め付けでもスタビレーの方が楽に締め付けをできます。
実際に使用しても少しですが東日のものより楽に締まる感覚がありました。
めちゃくちゃ大きく変わるポイントでもないので購入する際に気にするほどでもありませんが、少し楽に作業ができると思うと嬉しいポイントですね。
(もちろん他メーカーで全長や有効長が長いものもあります。)
ヘッド部外径・厚み
ヘッドの外径は約42.9mm
このサイズのトルクレンチとしては普通といったところでしょう。
東日「QL200N4」との比較。
パッと見た感じではほとんどわからないと思います。
ちなみに東日は約40.2mm。
東日の方が約2.7mm小さいですね。
ヘッドの厚みは約42.3mm
厚みに関しては少し厚めです。
東日と比較してもパッと見て厚みに差があります。
「730/20QUICK₋JP」は差込サイズやトルク幅的に厚みが邪魔になるようなことはかなり少ないと思いますが、1/4や3/8差込のものを購入する時は確認しておいた方が良いかもしれませんね。
グリップ部
グリップ部の長さは約10cm
斜めになっているためしっかりと測ることはできませんが、短めのグリップとなっています。
実際にグリップを持ったらこんな感じ。
短めのグリップではありますが、短すぎるということも無くしっかりと持つことができます。
本体質感
質感はサラサラとした感じ。
スタビレーらしい無骨な印象を受けます。
重量
重量は1516g
1.5ℓのペットボトルをイメージしてもらえればわかりやすいかと思います。
なぜかスタビレーのトルクレンチは重いイメージがあったんですが、持ってみると意外とそうでもありませんでした。
見た目が重そうに見えるのかな?(笑)
STAHLWILLE(スタビレー):トルクレンチ「730/20QUICK-JP」のレビューまとめ
本記事ではスタビレーのトルクレンチ「730/20QUICK₋JP」を紹介しました。
ずっと欲しいと思っていたトルクレンチだったこともあり、所有している満足感がとてもすごいです(笑)
実際に使ってみると、やはりトルクの設定値を戻さなくて良いのはとても楽で作業スピードも短縮されているのを感じます。
基本的にはホイールナットの締め付けにしか使わないので軽自動車と普通車でトルクを変えるくらいしかしません。
トルクの設定も一瞬で済みますし、気になっていた目盛りのズレも約1か月使って気にならなくなってきました(笑)
設定トルク到達時の「パキッ」という音は、私は心地よく感じ好きでした。
人によっては好きじゃないという方もいらっしゃるとは思いますので、もし試せる場合は一度試してみてから購入を考えるのも良いですね。
とは言え感触はともかく音は性能に直接関係するポイントではないので重視しすぎるのも違うかな・・・?
購入を悩んでいる方の一番のネックは価格かと思います。
私は購入して実際に作業で使ってみて、買って良かったと思っています。
しかし、「規定トルクで締め付ける」という目的で言えば他メーカーでも十分なのも間違いないです。
本記事でも比較対象として出した東日のトルクレンチなどは特にコスパに優れ、信頼度もかなり高いですね。
ご自分の財布としっかり相談して、余裕があるならばスタビレーをおすすめします。
少しでもトルクレンチの購入で悩んでいる方の参考になればと思います。
その他、整備士のおすすめの工具は