こんにちは。ウミガメ(@umigametool)です。
今回は整備士はもちろん、初心者(サンデーメカニック)の方でも絶対に持っておきたい工具「トルクレンチ」を紹介します!
トルクレンチは色々なサイズ、対応トルクのものがありますが、自動車で一番使用するのはホイールナットの締め付けかと思います。
ですので今回はホイールナットの締め付けに丁度いい対応トルクのものを紹介していきます。
基本的に対応トルクが違っても同じメーカーのものならサイズが違うだけで使いやすさや精度はほぼ同じなので、他のトルク幅のモノを欲しい方は同じシリーズのモノを買っていただけたらと思います。
エンジンの整備やバイク整備など、使用する作業に応じて自分の必要なトルク幅を選んでください。
関連記事:ホイールナットにトルクレンチは必要?間違った使い方や必要性を解説
トルクレンチとは
トルクレンチは「ボルトやナットを決められたトルク値(力)で締め付ける為の工具」です。
トルクレンチには種類があります。
プリセット(プレセット)型
決められたトルク幅の中で、締め付けたいトルクを設定して使用します。
設定はグリップ部やグリップエンドを回して行う事がほとんどで、設定したトルク値まで締め付けると「カチッ」っと音が鳴り、振動が伝わります。
現在ではほとんどの整備士がこのタイプを使っていて、実際に売ってある物も多いので手に入りやすいです。
ビーム式、ダイヤル式
これらのトルクレンチは締め付けていくと針が動き、締め付けたいトルク値まで針が動いたところで手を止めます。
トルク値を設定する必要がなく、締め付けの途中でもその時点でどれくらいのトルクで締め付けているのかを見ることができます。
針なので細かいトルクが見づらく、目標トルク付近になると慎重に力を入れる必要がある為少し時間がかかり神経を使います。
今個人で使っている人は少ないタイプですね。
デジタル式
最近増えているデジタル式。
設定したいトルク値を記憶させ、使う時は記憶させたトルク値から選んで使用します。
設定トルクまで締め付けると音や振動などで使用者に知らせてくれます。
締め付けトルクのデータを取り出すことができるタイプもあります。
最近増えてきていますが、価格が高い事もありまだまだ使用者は少ないです。
単能式
単能式はトルクを好きな数値に設定できません。
出荷時からトルクを設定してあり、そのトルク値でのみ使用できます。
使用用途がしっかり決まっていればトルク値を設定する手間や時間を短縮できるというメリットがあります。
しかし価格が飛びぬけて安い訳でもなく他のトルク値で使用する事もできないので整備士のように色々なトルクでの作業が予想される場合は単能式を購入するメリットは小さいです。
タイヤ屋さんや個人でスタッドレスなどの付け替え作業を行うサンデーメカニックの方には良いですね。
初心者・サンデーメカニック向けおすすめトルクレンチ
E-Value
初心者の方やサンデーメカニックの方はこういう安いトルクレンチでも安心感が違うので絶対に使うようにしましょう。
価格は安いですが使用時に落としたり間違った使い方をしない、しっかりとした保管をするという点に気を付けておけば大きく数値がズレる事は無いと思います。
仕事で使用される方は使用頻度も高いですし、信頼度ももう少し高い方が良いと思います。
STRAIGHT(ストレート):ホイール用トルクレンチ
サンデーメカニックの方の中にはスタッドレスタイヤの交換等でトルクレンチを「ホイールナットの締め付けにしか使用しない」という方もいらっしゃるかと思います。
そんな方におすすめなのが工具メーカー「ストレート」のホイール用トルクレンチです。
単能型なのでトルク値を設定する必要がなく、使用後もトルク値を戻さなくて良いのでホイールナットの使用に限定すればとても使いやすいトルクレンチになります。
サイズ(トルク値)は2種類あり
・15-7102:規定トルク85Nm(スズキ、日産系自動車等)
・15-7103:規定トルク103Nm(トヨタ、ダイハツ車等)
となっています。
自分の車の規定トルク値を確認して購入しましょう。
KTC:プレセット型トルクレンチ
KTCから2020年9月に発売された新しいトルクレンチです。
KTCという事もありホームセンターなどの店舗でも比較的入手しやすく、価格も抑えらえているので初心者・サンデーメカニックの方でも購入しやすいモデルとなっています。(在庫してある店は少ないと思いますが・・・)
目盛りも見やすく、グリップもフィット感のあるグリップとなっているので使用しやすいです。
もちろんKTCという事で信頼度も高いですね。
サイズランナップも豊富なので必要なトルク幅のものを選びましょう。
プロの整備士向けおすすめトルクレンチ
東日製作所
東日のトルクレンチはプロの整備士でも使用している方の多い、信頼度の高いトルクレンチです。
信頼度の高さの割に価格が安くコスパに優れたメーカーとなっています。
下手に中途半端な価格のトルクレンチを買うくらいなら、ほんの少し奮発して東日のトルクレンチを買っておいた方が安心して長く使用できるのでおすすめです。
本記事ではプロの整備士向けとして紹介していますが、初心者・サンデーメカニックの方でも手の出しやすいメーカーとなっているのでそういった方にもおすすめです。
Wera
トルク設定の時のグリップを回していっても固くならないのでトルクの設定が楽にできます。
また、目盛りがとても見やすくその点ではWeraが一番かと思います。
ヴェラ特有の粘度を握りしめたようなグリップ形状で持ちやすく、力が入りやすいです。
デザインも黒ベースでかっこいいですね!
価格は安くはないですが、イチオシです!
STAHLWLLE
スタビレーはトルクレンチを発明したメーカーですね。
通常だとトルクレンチは2万~3万程度で良い物が変えますが、スタビレーは4万円を軽く超えます。
その価格を出す価値のあるトルクレンチとなっています。
基本的にトルクレンチは1度使ったらその度にトルク設定を最低値に戻さないといけません。
これはスプリングを使用してトルク管理を行っているので、そのままにしておくとスプリングに癖がついてしまってトルクがズレてしまうからです。
しかしスタビレーは板ばねとベクトルループと言う仕組みを使っていて、力をかけた時にしか負荷がかかりません。
ですので設定をいちいち戻す必要がありません。
このサイズのトルクレンチはホイールナット締め付けに使用する事がほとんどだと思います。
それならトルクは設定したままにしておいた方が断然楽ですよね?(笑)
違う用途に使用する時だけ設定値を変更すれば良いので。
さらに、ヘッド部分を取り外して交換することが出来るのでスパナタイプやメガネタイプに交換する事も出来ますし、裏返しに取り付ければ逆ネジにも対応できます!
通常のタイプとクイックタイプがありますが、クイックタイプならトルク値の設定が一瞬でできるのでさらに使いやすくておすすめです。
KTC:デジラチェ GEKR200-R4
KTCからデジタル式のトルクレンチ。
デジタル式のトルクレンチはあらかじめ設定しておいた数値からボタンで選び、締め付け作業を行います。
プリセット型と比べると手間が少なく楽に作業を行う事が可能です。
KTCのデジタル式トルクレンチ「デジラチェ」は電池式と充電式のものがあり、好みで選ぶことができます。
電池式は電池が切れた際に電池を交換するだけですぐ使用できます。
充電式は長い目で見た時にコストを抑える事ができます。
トルクレンチの使い方・注意点
ダブルチェック厳禁
ダブルチェックとは「カチッ!カチッ!」と2回確認することですね。
トルクレンチは1回「カチッ」と鳴らせば設定のトルクで締まりますが、2回以上行うと設定したトルクを超えて締まってしまいます。
特にエンジンを組んだりする時は規定トルクも小さく、少し締めすぎただけでボルトが折れたりネジ山を切ったりという事に繋がります。
「トルクレンチでの締め付けを行ったかどうかを忘れた」時などは仕方ありませんが、極力行わないようにしましょう。
使い終わったら目盛りを対応トルクの最小値に戻す
現在多く使われている「プリセット型」のトルクレンチは中に入っているバネでトルクを調整しています。
使い終わってトルク設定をそのままにしておくと、バネが伸びたり癖が付いたりして正確なトルクでの締め付けができなくなってしまいます。
間違いがちなのが「最小値に戻す」という事。
「最小値以下」ではなく「最小値」です。
40~200Nmなら40Nmに。2~20Nmなら2Nmに合わせて保管します。
グリップをしっかり持ち、ゆっくり締め付ける
トルクレンチは使用方法でも締め付けトルクが変わってしまいます。
「グリップ」と一言で言ってもグリップエンド付近だったり、先端に近いところだったりと持つ位置の微妙な差で締め付けトルクが変わります。
持つ位置はグリップの中心、一番持ちやすいところです。
トルクレンチによっては持つ位置に目印が付いている物もあります。
また、勢いよく締め付けてしまうとトルク値が変わります。
急いでいる時でも焦らずにゆっくり締め付けてください。
逆(緩め方向)回し厳禁
トルクレンチはヘッド部分が通常のラチェットと同じような形状になっている物が多いです。
しかしプリセット型トルクレンチの内部の構造上、逆方向へ回してしまうと精度がかなり落ちてしまいます。
トルクレンチは精密測定工具なので、間違った使い方で精度を落としたり壊してしまったりしないよう正しい方法で使用しましょう。
一部のトルクレンチでは逆回しに対応しているものもありますので要確認です。
確認用ではなく締め付ける工具
よく言われるのが「トルクレンチは確認用の工具」
大きく間違っている訳ではありませんが、考え方が違います。
例えば100Nmで締め付けないといけないホイールナットをインパクトレンチで150Nm程度で締め付けてから100Nmに設定したトルクレンチで締め付けても意味がありません。
正しくい使い方としては規定値より弱いトルク(70~90Nm程度)で締め付けてから、トルクレンチで100Nmになるように締め付けます。
「設定のトルクより大きなトルクで締まっているかを確認する工具」ではなく、「設定したトルクで締め付ける工具」という事です。
トルクレンチのメンテナンス
トルクレンチは最終確認のための工具です。
そのトルクレンチの精度が狂ってしまっていたらトルクレンチを使用する意味がありません。
正しいトルクで締め付ける為に定期的なメンテナンスを行いましょう。
定期的なトルクチェック
正しいトルクで締め付けできているか確認できる「トルクチェッカー」があれば簡単に精度を確認する事ができます。
ただトルクチェッカー自体が安いモノでも約80000円~と高いため、個人で持つというより会社に用意してもらう方が良いかもしれません。
トルクレンチを複数本持っている方はトルクチェッカーを購入しておけば業者にメンテナンスを頼む頻度を減らせるので長い目で見ると費用を抑える事ができます。
トルクチェッカーがあれば手軽にトルクのズレを確認できるのでトルクレンチを安心して使用できますね。
校正・修理
トルクチェッカーでチェックした時に大きなズレが出たり、落としたり逆回しといった間違った使い方をしてしまった場合はトルクレンチの「校正・修理」が必要になります。
校正とはその「トルクレンチの数値が本当に正しいかどうかを確認し、ズレていたら調節する」作業の事です。
校正はトルクレンチのメーカーで行っているところもありますし、校正専門の業者もあります。
Asahi Technoなら通常より安い価格で国内国外問わずトルクレンチの校正を頼むことができるのでおすすめです。
トルクチェッカー等で確認できない場合は数年に一度程度校正に出してしっかりとした精度でトルクレンチを使いたいですね。
まとめ
トルクレンチは作業の一番最後に既定のトルク値でしっかりと締めるための工具です。
最終作業を信頼できない工具でやっていたら意味がないので、できるだけ信頼できるトルクレンチを使用するようにしたいですね。
自分の使用シーンや、予算を考えて自分に合ったトルクレンチを選ぶようにしましょう。
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